「災害時の食支援マニュアル」づくりがスタート
長野市の「長野ターミナル会館シェアキッチン」にて、食支援ラボを開催しました。
食支援ラボでは、これまで2年間にわたり、災害時の食支援についてさまざまなテーマを取り上げ、学びや意見交換を重ねてきました。
そして今回から、いよいよ次のステップへ。
これまでの学びを具体的な形につなげるため、「災害時の食支援マニュアル」づくりに、参加者みんなで取り組んでいきます。
災害の現場から学ぶ
ラボの冒頭では、現在、全国各地で発生している災害について情報を共有するとともに、実際に被災地で活動されたお二人から、現地の状況や支援活動についてお話を伺いました。
① 熊本地震について
長野県危機管理部 丸山さん
丸山さんは、熊本地震の発災後、初動対応のため宇城市に派遣され、罹災証明書の受付業務にあたられました。
業務の合間に避難所や被災者の生活環境を見て感じたことについてもお話しいただきました。
今回は猛暑の中での被災地の生活環境について、厳しい暑さの中で避難生活を送ることの過酷さが伝わってきました。同時に、被災者一人ひとりの状況に合わせて支援することの難しさについても考える機会となりました。
② 千葉豪雨災害について
長野県災害時支援ネットワーク 古越さん
古越さんは、災害中間支援組織である「災害支援ネットワークちば」にアドバイザーとして関わられました。
その中でのお話で特に印象に残ったのが、洪水災害ならではの「被害が見えにくくなる」という課題です。
地震とは異なり、洪水では時間が経つと水が引き、外から見ると「元に戻った」ように見えてしまうことがあります。
その結果、避難所が早期に閉鎖されたり、災害ボランティアセンターが立ち上がらなかったりすると、被災者に必要な支援が届きにくくなることがあります。
災害の種類によって、被災者が抱える課題や支援のあり方も異なることを、改めて考えさせられました。
いよいよ「災害時の食支援マニュアル」づくりへ
今回のメインテーマは、「災害時の食支援マニュアルづくり」です。
つなぎ局災害支援班が食支援を通して目指しているのは、「災害関連死を防ぐこと」。
そのためには、単に食事を届けるだけではなく、主食・主菜・副菜など、できる限りバランスのとれた食事を提供することや、被災地の状況に応じて適切に支援を行うことが重要になります。
しかし、実際の災害現場では、
・何を準備して現地に向かうのか
・どのようなメニューを提供するのか
・備品で必要なものは何か
・食材をどのように調達・補給するのか
・衛生管理をどう行うのか
・ゴミや排水をどう処理するのか
・チームとしてどのように動くのか
など、考えておくべきことがたくさんあります。
そこで、平時のうちに必要なことを整理し、「いざというときに、何をすればよいのかが分かる」マニュアルとしてまとめておくことが、支援をより円滑にするために重要だと考えました。
今回は、マニュアルに盛り込むカテゴリーをグループごとに検討し、それぞれのカテゴリーについて、必要な内容や具体的なアイデアを出し合いました。

「いきなりマニュアルの内容を考えるのは難しいかもしれない」とも思っていました。
ところが、キッチンカー事業者の皆さんからは、日々さまざまな場所で営業しているからこそ見えてくる、「実際の現場で起こりそうなこと」が次々と出てきました。また、キッチンカー事業者以外の参加者の皆さんからも、食支援に関心を持つ方ならではの視点から、たくさんの意見が出されました。
短い時間の中でも、具体的で実践的なアイデアが数多く集まりました。

【食材調達・補給】
- 先に活動している他の支援チームとメニューが重複しないよう、事前に情報を入手する
- 現地のニーズと提供内容にずれが生じた場合の対応を、チーム全体で共有する
- 被災者だけでなく、支援者の食事も忘れずに確保する
【衛生管理】
- 長期保存できるものやレトルト食品などを活用し、現地で生ものを使用しない工夫をする
- 調理エリアの衛生管理について、あらかじめルールを設定する
- 「出発前の事前準備」と「現地での実際のオペレーション」の2つの軸で整理する
【ゴミ・排水】
- できる限り食材の下処理を済ませてから現地に入る
- メニューと食数から、ゴミの量や排水量をあらかじめ予測する
- かさばる包材を持ち込まない工夫をする
- 現地で排水処理ができるか、事前に確認する
- 「食材搬入担当」「ゴミ持ち帰り担当」など、チーム内で役割を分担する
【要配慮者】
- 「要配慮者」とひとくくりにするのではなく、支援の対象や課題を具体的に整理する
- 乳幼児、妊婦、青年期、高齢者など、ライフステージごとに整理する
- それぞれについて、「困っていること」「配慮できること」「専門職でなければ対応できないこと」を見える化する
- キッチンカーによる食支援で対応できる範囲と限界を明確にする
わずか1時間弱の検討でしたが、これだけ具体的な内容が整理されたことには、私たち自身も驚きました。

「現場に抱えさせない」という視点
最後に、長野県災害時支援ネットワークの古越さんから講評をいただきました。
その中で特に印象に残ったのが、次のような視点です。
「マニュアルは、支援に関わる人たちにとっての共通言語になる」
そして、そのマニュアルを「誰が使うのか」によって、必要となる視点や強調すべき内容も変わってくるということ。
また、
事業者が現場で「食材を廃棄します」「食材を調達します」とすべてを抱え込むのではなく、行政や中間支援組織が「現場に抱えさせない」仕組みを考えることが重要
というお話もありました。
これは、災害ボランティアでよく言われる「自己完結型支援」とは異なる視点です。
つなぎ局が目指しているのは、キッチンカー事業者だけに負担を背負わせる支援ではありません。
県・長野県災害時支援ネットワーク・つなぎ局災害支援班が、それぞれの役割を担いながらチームとして支援すること。
今回いただいた「現場に抱えさせない」という視点は、これからマニュアルづくりを進めていく私たちにとって、大きな気づきとなりました。
「いざというときに動ける」食支援へ
今回の食支援ラボは、災害時の食支援マニュアルづくりの第一歩です。
今回出されたたくさんの意見を整理し、さらに検討を重ねながら、「いざというときに、誰が、何を、どのようにすればよいのか」が分かるマニュアルを、参加者の皆さんと一緒につくっていきます。
災害時にも、被災された方ができるだけ日常に近い食事をとることができるように。
そして、食を通じて少しでも安心を届けられる支援体制をつくるために。
食支援ラボでの学びを、次の一歩につなげていきます。

